『 花一輪 』




「見て!雪が降ってきたわ。雪は好きだけど寒いのは苦手。飛影は?」

「苦手・・・ではない。」

「そっか、飛影は氷女の雪菜ちゃんと兄妹だから、寒さは平気なんだ。」

「・・イヤ、そうではない・・・」



     冬は嫌いなはずだった。

     魔界の冬は、人間界のそれよりもっと厳しい。

     俺は冬になると、あの氷河の国を思い出した。

     心までも冷たく閉ざした、あの国を。

     恨みが消え去った今でも、時々あの忌まわしい過去を

     思い出すことがある。

     だから、冬は嫌いなはずだったが・・・・・



     今はコイツがいる。冷たく凍った身も心も柔らかく溶かし、

     春に咲く花のような、コイツが。



「じゃぁ、何故?」

「寒いと遠慮なくオマエを抱きしめられるからだ。」



俺はそんなことを言う自分が可笑しくてフッと笑った。

外は雪。



二人の体温がお互いを暖めあう、こんな冬を俺は結構気に入ってるのかもしれない。








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