二人だけのクリスマス♪



「あーーん、やっぱり熱下がってない・・・」

ネットで大人気のスキー場のホテル。飛影と二人でホワイトクリスマス♪を過ごしたくって、
キャンセル待ちでやっと予約出来たのに。きのうから熱が出て、クリスマスイブの今日に
なっても熱は下がってない・・・

「おまえの普段の行いが悪いせいだ。ちゃんと節制をしてないから風邪など引くのだ」

「そんな言い方しなくっても・・・」

飛影の言う事も分かるけど、病人に対して、もう少し優しく出来ないの?
だいたい「節制」の意味なんて知ってるの?なんて、思わず言ってしまう所だった。
私、かなりへこんでいるんだから・・・・
ホテルのお食事は、本格的なイタリアン料理。特にパスタは絶品だって。
そして、庭には巨大モミの木がライトアップされて、その木の下で恋人とイブを過ごすと
ずっと幸せでいられるって言われてて、もう、ずーーっと、楽しみにしてたのに。
そりゃぁ、風邪引いたのは私のせいかもしれないけど、そんな言い方しなくてもいいじゃない。

「用事があるから、ちょっと出かけてくる。ちゃんと寝ていろよ。明るいと眠りにくい
 だろうから、カーテンを閉めておいてやる。いいか、ちゃんと寝て、風邪を治せ。」

「あ、飛影・・・」

もう、飛影ったら、病人置いてどこに行くのよー。薄情者! って息巻いても、熱っぽい体が
かなり辛い。飛影の言うとおり、おとなしく寝ていよう。



私、いつのまにか眠っていたみたい。今、お昼頃かな?飛影はまだ帰ってきてない。
熱はまだあるみたい。体が少し怠い。それにしても、外が何だか騒がしいな。工事でも
してるのかな? とにかく、もう少し寝ていようっと。



あー、よく寝た。外はもう暗くなって、私、一日中眠っていたみたい。
向こうの部屋で物音がする。帰ってきたのかな?

「飛影・・・?」

「目が覚めたか。どうだ、熱は下がったか?」

相変わらずのぶっきらぼうな顔のまま、額と額をくっつけて熱を計ろうとしてくれて、
ちょっと幸せ。病気になって良かったかも♪ でも、熱計るのに、額の布邪魔にならないかしら?

「どうやら、熱は下がったみたいだな。こっちに来て、見てみろ」

と言って、飛影が窓のカーテンを開けたので、外を見ると真っ白な銀世界!

「あれ・・・?寝てる間に雪が降ったの?」

ううん、違う。雪が積もってるのは、うちの前だけ。隣の家も、その隣も雪なんか積もっちゃいない。
どうして・・・・・・?

「さすがに、スキー場まで行って、雪を運ぶのは大変で、夕方までかかってしまった。モミの木とは
違うが、あの木に飾り付けをしてやったぞ。」

「じゃぁ・・・用事って、この事だったの?どうして、こんな事を?」

「ホワイトクリスマスをしたいと言っていただろう」

目が覚めた時、外が騒がしかったのは、飛影が雪を運んだりしてたからなんだ。
おまけに、松の木に飾り付けまで・・・私、何も気が付かなかった。

「それより、腹は減っていないのか?朝から何も食べていないだろう」

「うん」

「うどんを作ってやっている。病人にはこれがいい。一流シェフのパスタ料理とはいかんが、
パスタもうどんも似たようなもんだ。体を冷やすといかん。いい加減窓から離れてこっちで食え」

飛影が私のためにうどんを・・・私、嬉しくて、涙が出てきてグチャグチャの顔になっちゃった。
暖かくて、おいしい・・♪ 私、こんなにおいしいうどん食べたの初めて。

「ごめんね、飛影」

「なんのことだ?」

「私、病人を放ったらかして出かけていった飛影を薄情者だなんて思ってた。」

「フン。クリスマスだというのに、くだらん理由でおまえの泣きそうな顔など見たくなかったからな。
正直言って俺は、一流ホテルも豪華なディナーもいらん。 ただ、おまえと二人で過ごせればいい。
それだけでは不満か?」

飛影がそんな風に思っていたなんて。
涙がどんどんあふれてきて、飛影の言葉に頷くだけで、もう声にならなかった。
飛影の腕が、そっと私を引き寄せた。

「メリークリスマス、


 
*END*



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