「妖魔の印」の章

氷泪石の秘密 第6話




久遠は足下に転がってきた氷泪石を拾い上げた。すると氷泪石は一瞬だが

暖かい光を放ち、久遠の周りをおおったのだった。久遠と飛影を氷女は

  驚いた表情でそれを見ていたが、その横で真於は当然だという顔で言った。



「ね、僕が言った通りでしょ? 氷泪石は大事な人を守ってくれる石なんだ。

 久遠さんのお姉さんの気持ちがこもってるから、そんな風になるんだよ。」



久遠はまだ納得いかないようだったが、先程までの殺意が薄れている事に気づいてた。

それを知ってか知らずか、真於は言葉を続けた。



「確かに氷河の国が僕たちにした事は悲しい事だと思うし、それを怨む気持ちも

 わかるよ。でもそうやって憎しみの中で生きていてもしょうがないと思う。勇気を

 持って、憎しみを断ち切らなきゃダメなんじゃないかな?それを手伝ってくれるのが

 母さんの残してくれた氷泪石だと思う。久遠さんもどこかでそう感じてたから氷泪石

 を持っていたんじゃないの?本当に憎い物なら、とっくに捨ててしまってたと思う。」





飛影は真於の言葉を聞いて、やっと分かったような気がした。昔、氷河の国への憎しみの

為に生きていた頃、恨みの象徴でもある氷泪石を捨てられなかった理由が。この少年の言葉

で、やっと・・・・





「昔、俺も氷河の国を怨んでいた。だが、どうしても氷泪石は捨てる事が出来なかった。

 ずっとその理由が分からなかったが、お前に当たり前のように教えられるとはな。

 貴様もそうじゃないのか?」





しばらく何も言わず、姉の氷泪石を見つめていた久遠に飛影は言った。







「坊主、これを瑠紅に返してくれ。」

久遠は懐から”妖魔の印”を取り出した。



「久遠さん、いいんですね?」



真於が受け取った瞬間、いきなり妖魔の印が魔界中を照らすかと思われる程強く輝

きだし、それに呼応するように、真於の氷泪石も輝き始めた。



「ああ!!!これは・・・まさか!!」

氷女が叫んだ。


「何か知っているのか?」


「はい・・・。

 ”妖魔の印”は妖力を極限まで高める力があると言われていますが本当は魔界を

 平和に保つ力が隠されているのです。そして”妖魔の印”に選ばれし者だけにそ

 の資格があると言い伝えられています。

 真於さん、あなたが選ばれし者だなんて・・・・。」





「フン、皮肉なもんだ。忌み子として捨てられた子供が、魔界を平和に保つ力がある

 とはな・・・。」

飛影が薄く笑った。



「はい・・本当に・・。でも、これで、氷河の国が少し変われるかもしれません。」

氷女は、光に驚いて集まってきた長老達を見ながら安心したように言った。





「ばばぁ達は苦手だ。俺達は下界へ下りる。」

そう言うと飛影は、驚きで放心状態の真於を抱えて下りていった。



「もし、氷河の国がこれからも変わらなければ、今度は本当に滅ぼしに来る。」


久遠は姉の氷泪石をギュッと握って、飛影達に続いて下りていった。









「貴様、これからどうするつもりだ。」


「また、旅に出る。この広い魔界を旅して、自分の生きる道を確かめる。そして

 他の忌み子にあったら今日の事を伝えるつもりだ。」


「それもいいだろう。」


「坊主、瑠紅に謝っておいてくれ。ひどい怪我をさせちまった。お前も忌み子の

 代表として、しっかりやってくれよ。」


そいういと、久遠は飛影達に軽く手を上げ歩いていった。



飛影はまだ放心状態の真於を引っ張って、途中で瑠紅を拾い上げ、村まで連れて

帰った。その道すがら、氷河の国の出来事を聞かされた瑠紅は、驚いたり喜んだり

賑やかな反応をした。



「飛影、今回の事、本当にありがと。」

「いや、礼を言うのはこっちの方だ。大事な事を、真於に教えて貰ったからな。」

「飛影さん、僕これからどうすれば・・・?」

「じっくり考える事だ。お前なら出来る。いいな!」


不安そうに訴える真於の頭をクシャクシャと撫でて言った。



「じゃぁ、俺はもう行く・・」

と歩き出した飛影だが、ふと振り返り瑠紅にむかって、



「あぁそうだ、貴様とはまだ決着がついてなかったな。次の魔界トーナメント、  楽しみにしてるぜ!」



と言って、ニヤリと笑った。





<<<完>>>







最後までお付き合いして頂いて、ありがとうございました。
なんだか、無理矢理な終わり方をしてしまいました。
健忘症がひどくなってきているのか、考えている時は色々な言葉が
思い浮かぶのですが、いざPCの前に座ると、頭が真っ白になって
しまうのです(泣)
おそらく意味不明な箇所が多数あると思いますが、適当に読み流して
やって下さい。
「妖魔の印」の章、書き終わるまで約1年かかりましたが、
全て読んで頂いた方には、心よりお礼を申し上げます。




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