『肝 試 し』



夜更け・・ここは幻海の寺・・・幽助、桑原、蔵馬、飛影の4人に幻海はこう言い出した。

「お前たち4人を呼んだのは他でもない。ちょっと頼みたい事があってな。まぁ、肝試し
 のようなもんじゃが・・・」

  一本の蝋燭の火だけが灯るお堂で幻海と4人は車座になった。

「この山の奥に、古い小さい祠があるのを知っているか?昔、この近くの村に
 一人の娘がおった。娘は若く美しい男に恋をしたが、男に騙され金を騙し取
 られ、捨てられ、そのあげく恨みを持って娘は自ら命を絶った。その後、魂
 を鎮めるために仏像を造り祀ったそうじゃが、恨みを持った魂は完全には鎮
 められず、今でも年に一度、娘の命日に魂が戻ってくるという話じゃ。
 今日はその命日。お前達にはその魂を鎮めるための護符を、祠へ持っていって
 貰いたい。」

幽助達4人は渋々祠へと向かった。

辺りは物音1つせず、時々風に木々がざわめくだけであった。気味の悪い夜だった。

突然、幽助の動きが止まった。

「うわー!」

「どうした、幽助!!」

「か、体が金縛りにあったように動けねぇ・・・」

身動き出来ない幽助の背後から何者かが近づき、幽助を目隠しした。

ギャーーーー!!!!!!

   アハハハハハハハハハハ・・・・・

その笑い声の持ち主は・・・

「け、蛍子ぉぉぉ???何でお前ぇがここにいるんだよぉ。」

「おばあさんに頼まれたんだもん。だけど、こんなに吃驚するとは思わなかったわ。
 幽助って以外と恐がりなのねぇ。」

「チェッ、かかちまったか。もしかして、あの金縛りみてぇのは・・・城戸かぁ?
 正直ビビっちまって、気づかなかったぜ。」

その時、どここらか冷気が漂ってきた。その先には人影が・・・

「この冷気・・・まさか!雪菜さ〜ん♪」

満面の笑顔で人影に向かってスキップしだした桑原だったが、木の陰から現れた

雪菜に呼び止められた。

「和真さん!あれは私ではありません!私はここにいます。幻海師範に皆さんを
 驚かすように言われていたんですけど、タイミングがわからなくて・・・」

「ゆ、雪菜さん?じゃぁ、あの冷気を出してる人影は・・?」

「わかりません・・・でも、あの冷気には敵意を感じます。和真さん、怖い・・」

「心配ありませんぜ。男桑原、雪菜さんの事は命に代えてでもお守りします!」

その瞬間、冷気の主は桑原達に襲いかかろうとした。

グギャーーーーーッ!!!!

「キャッ、和真さん・・・」


  ボコ、ズカ、バシッ!!!


「痛てぇぇぇーーー!!オイ、飛影!何しやがるんだ」

「いい加減、雪菜から離れろ!フン、何が雪菜を守るだ。」

「そうですよ、桑原君。守るなんていいながら、雪菜さんにしっかりしがみついて
 るなんて。」

「貴様は顔だけじゃなく、目まで悪いのか。アレは雪菜をコピーした柳沢だ。」

「ヘッ・・・?・・・じゃぁ、雪菜さんも俺を騙したんですか・・?そんなぁ・・」

「和真さん、ごめんなさい・・・・」

申し訳なさそうに謝る雪菜達を後にして、4人は進み始めた。



「にしても、蔵馬と飛影はさすがだよな。ビクリともしねぇなんてよぉ。」

「フン、当たり前だ。」



しばらく行くと、今度は木の間をフワフワ漂う物が見えた。しかし、それは・・・

「オイオイ、ぼたん。お前ぇまでグルかよぉ。」

「あれぇ?幽助、分かっちまったのかい?を消して幽霊のマネしてたんだけどさぁ」

「ぼたんちゃん、俺でも一目で分かったぜ。」

「そうですよ。驚かすならもう少しそれらしくしてくれないと。ねぇ、飛影。
 ・・・飛影?飛影?どうしたんですか?」

「貴様等、騙されるな!そいつはぼたんなんかじゃない!れっきとした幽霊だ!!
 その証拠に""がないだろ!」

「あらまぁ、何言ってるの、飛影。私は本物のぼたんちゃんだよ。体の一部を消す事く
 らい、霊界の者なら簡単な事なんだよ。」

「いや、偽物だ!」と言い張る飛影を引きずって、やっと祠にたどり着いた。

「ここかぁ・・・。随分荒れ果てた所だなぁ。何だか、気味悪くねぇか?」

「そうですか?オレは平気ですよ。さぁ、護符を供えましょう。」

蔵馬が護符を置こうとした時、どこからか小さな声が聞こえてきた。

   おまえが・・・憎い・・・わたしを捨てた・・おまえが・・・憎い・・・

「娘の怨霊か・・・」

初めは冷静だった蔵馬だが、祠の前に置かれていた多くの呪いの札を見て驚いた。

「名前が書かれてあるぜ。えーっと、盟王高校2年、Y子?これって蔵馬の高校じゃ
 ねぇのか?『S・Mにふられた恨みは忘れない』S・Mって「シュウイチ・ミナミノ」
 蔵馬の事かぁ?他にもたくさんあるけど、全部同じ様な内容だぜ。」

「オイオイ、蔵馬。てめぇ紳士面して、たくさんの女泣かしてるんじゃねぇのかぁ?」

「し、心外だなぁ桑原君。確かにこの子達から交際を申し込まれたけど、丁重に断って
 ますよ。」

「だけど、女の恨みは恐ろしいからなぁ・・・・生き霊って事もあるよなぁ」

「そんな、幽助まで・・・・・・」

蔵馬は冷静さを失いかけた。

   おまえが・・・綺麗な顔をした・・おまえが・・・憎いっっ!! 
 
「ん?この声どこかで聞いた事が・・・?姉ちゃん?姉ちゃんじゃねぇのかぁ?」

「和真、やっと気がついたんだね。相変わらず勘が鈍いんだから。」

「静流さん!!!もう、人が悪いなぁ」

「ゴメンね、蔵馬君。ちょっと交友関係とか調べさせてもらったよ。それにしても、
 みんな案外だらしないねぇ。」




その頃、4人の帰りを待つ幻海達は・・・

「幽助達遅いわねー。」

「和真さん達、大丈夫でしょうか?」

「あっ、そうだ!さっき静流さんに化粧品の試供品を一杯貰ったんだよ。暇つぶしに
 皆で試さないかい?師範も若返るかもしれないよ。」





「オーイ、ばあさん。帰ってきたぜ」

お堂の中は蝋燭が消え真っ暗だった。

「お帰り。遅かったじゃないか?」

そう言いながら振り向いた幻海の顔は・・・・


「の、のっぺらぼうだぁーーー!!!!」
「グギャーーーー!!!!」
「☆□♀♂!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」



「アラアラ、4人とも気絶しちまってるよ。暇だったからパックしてただけなのに。
 ねぇ、幻海師範。」

「あぁ、こいつら、案外肝が小さいんじゃなぁ・・・・・・・・(溜息)」




・・・おわり・・・




最後まで読んで頂きありがとうございます。
「幽白サーチ」様の夏企画に応募したものです。
誰のセリフか分かりにくい上に、ベタベタの落ちでスミマセンでした。(反省)



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