新婚さんのバレンタイン 1 (作者・安奈さん)



「ねぇ、甘い物好き?」
さんが旦那様と結婚して初めての。というより、
出会って初めてのバレンタイン・デーが近づいたある日。
何気なさを装って、そんな事を訊いてみました。
「いきなり何故そんな事を訊く?」
そんなさんに訝しげな眼を向ける旦那様。
「あ、その、ケーキ作ったら食べるかなと…」
「いらん」
さんに最後まで言わせず、にべもない言葉を返す旦那様。
内心溜息をつかずにいられないさんなのでした。

その旦那様の出勤を見送り、さんは考えをめぐらせた。
旦那様は甘い物は嫌いなようだし…どうしようか…。
考えた上でさんは、旦那様のお友達に訊いてみる事にしました。
(う〜ん、でもこの時間だと幽助さんはまだ寝てるだろうし、
蔵馬さんはもうお仕事に行ってるよね。 桑原さんは…
どっちにしてもこの時間にお邪魔するのは非常識か…)
そこでさんはまず家事を片付け、バレンタイン特集の載ってる
雑誌に目を通しながらお茶をし、お昼過ぎまで時間をつぶします。
(そろそろ幽助さんも起きた頃かしら)
そう思ったさんは、まず電話を掛けてみました。

トゥルルルルル♪ トゥルルルルル♪ トゥルル…ガチャッ

「はい、もしもし浦飯です」
電話に出たのは幽助の奥さん、螢子さんでした。
「もしもしですけど、幽助さんもう起きてますか?」
「あら、さん。残念だけど幽助なら今日はなんか用があるって、
ついさっき出ちゃったばかりなのよ。なにか用だったの?」
「あ、うん。ちょっと…ごめんね、お騒がせして」
「ううん、いいんだけど…もしかしてバレンタイン関係?
まだ新婚だもんねー。あぁ羨ましい」
からかうような螢子の声に、上ずった声で返事をするさん。
「じゃ、がんばってネv」
そう言って螢子さんの電話は切れました。
(そっか〜、じゃどうしようかな…)
ふたたび考え込むさん。

トゥルルルルル♪ トゥルルルルル♪ トゥルル…ガチャッ

「はい、桑原。どちらさま?」
今度掛けたのは、桑原君のお宅。出たのは静流さんのようです。
「あらちゃん、久しぶり〜。和になんか用?それとも雪菜ちゃん?」
「和真さんにお訊きしたい事があるんですけど、何時頃帰りますか?」
「ん〜、アイツここんとこ残業で遅い事が多いのよね。
あ、でもちゃんのためならケータイで呼びつけてやるわよ。何時頃がいい?」
「いえ、それなら結構です。すみませんでした」
「ホントにいいの?気にしなくていいんだよ?そう、じゃまたね。
たまには飛影君とふたりで遊びに来てね。バイバ〜イ♪」
さて、ここもダメでした。 残りはあと一つ…。

トゥルルルルル♪ トゥルルルルル♪ トゥルル…ガチャッ

「はい、南野です。あ、さん。どうしたんですか?急に」
「あの、ちょっと相談したい事があったんですけど…
この時間家にいるなんて、どうかしたんですか?」
「ああ、これからから出張でね。今準備してるところなんですよ。
ところで相談て急ぎですか?
出張から帰ってきてからでもよければ聞けるんだけど…」
「あ、いえ大した事ではないので。お忙しいとこお邪魔してすみませんでした」
「こっちこそ相談にのってやれなくてゴメンね。じゃ」

これで八方ふさがりです。 う〜〜ん…。
とりあえず夕方の買い物に向かうさんでした。




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