『新婚さんのバレンタイン』-2- (作・むくむく)



その日の夜、仕事から帰ってきた旦那様は黙々と食事をしていました。
いつもなら、「おいしい」とも「まずい」とも言ってくれないのを
寂しいなと思うさんですが、今日はバレンタインの事で頭が一杯でした。

(甘いものもダメ、今からセーター編んでも間に合わないし・・・
 う〜〜ん???たまには豪華に、レストランでお食事でもしようかな)

そう思って、旦那様の都合を聞こうと思った時、旦那様が言いました

「今度の金曜は出張だからな。」

「今度の金曜・・・エエーーーッ!!もしかして、14日?!!!」

「そうだ、14日だ。出張などよくある事だ、何を驚いている?」

「・・・別にぃ・・・」

密かに楽しみにしていた、初めてのバレンタイン。仕事なら仕方がないのは
わかっていても、かなりへこんでしまいました。

「おい、寝るぞ」

がっかりしているさんの気も知らずに、旦那様はさっさと寝室に行ってしまいました。
後片付けを済ませたさんが寝室に行くと、旦那様はもう夢の中。
ちょっぴり腹が立って、唇も、とがり気味です。

(仕方ないのはわかってるけど・・・それにしても、出張が多いなぁ。
 一体、どんな仕事をしてるのかしら? 商社の営業としか教えてくれないし。 
 もしかしたら、私、飛影の事あまりよく知らないのかもしれない。
 出会って3ヶ月で、スピード入籍。そして今、新婚3ヶ月。
 たった、6ヶ月間の飛影しか知らない。 彼の友達といえば、幽助さん夫婦、
 桑原さん姉弟、蔵馬さん、そして雪菜ちゃん位しか、聞いた事ないし。
 出張の時、こっそり後をつけちゃおうかな?)

なんて思いながら旦那様の方を見たさんですが、旦那様の子供のような寝顔を見て、

(やっぱり、やーめた。過去や仕事の事なんか知らなくっても、飛影は私だけの飛影だもん。
 そうだ!!宿泊先のホテルにこっそり行って、驚かしちゃおうかな。仕事が終わった後なら
 構わないだろうし。我ながら、いい考えだわ〜)

と、思い直しました。

起こさないように、そっと布団に入ったさんでしたが、旦那様は気づいたようで、

「まだ起きていたのか、。早く寝ろ」

と言って、さんの頭に手を回し、腕枕をしてくれました。

(し・あ・わ・せ♪)

さんはそう思いながら、眠りに落ちていきました。





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