ある夏の出来事 2 (作・安奈さん)


翌日、1番最初に目覚めたのは蔵馬だった。
朝の爽やかな日差しの中で見る部屋は…げんなりするほど汚かった。
とりあえず蔵馬は溜息をひとつつくと、幽助と桑原を起こしにかかる。
3人が身支度を終え部屋から出ると、そこにはすでに飛影が待機していた。
「遅いっ。さっさと始めるぞ」
そう言って手早くガラクタを片付け、掃除を始める。
((恐るべし雪菜ちゃん効果!))
その飛影の背中を見てつぶやく幽助と蔵馬。
そんな中、桑原だけがくびをひねっていた。

ようやくそれなりに片付けが終わり、掃除に入ろうかというお昼頃。
「あの〜」
4人の女の子が別荘に入ってきた。
「あの、なにやってるんですか?」
「何って…見りゃわかんだろ」
いい加減片付けに飽きてきた幽助がぶっきらぼうに返す。
「あぁ、オレ達ここの持ち主に頼まれてね、大掃除のバイトしてるんですよ」
それをにこやかにフォローする蔵馬。
「あなたがたはこの近辺に住んでるんですか?」
「ううん、あたし達昨日からこっちに旅行に来てるの。
 そしたらおばけ屋敷があるってウワサを聞いて…のぞきに来てみたのよね」
後半は同行者に向かって言う。
「うんうん、そしたらチョーかっこいい人がいるんだもん。びっくりしちゃったぁ」
「「「ねーv」」」 と3人の声が合わさり、さすがの蔵馬の顔にも冷汗が垂れる。
「ねー、バイト後にしてー、一緒に遊ばない?」
女の子に腕を取られ、そう声を掛けられたのは蔵馬。
「わりーけどオレら急いでんだよ。邪魔すんなら出てってくんねー?」
そう不機嫌な声を上げたのは幽助。
「あんたには言ってないでしょぉ? ヤな感じぃ」
そう言って女の子の1人が唇をとがらす。
「すみませんが、ここが片付け終わったら友達を呼ぶ事になっているんで、
 早くすませてしまいたいんてすよ」
仕方なく蔵馬がやんわりと断りの言葉を告げた…つもりが、
「あ、じゃ〜ぁあたし達手伝いますよ。そしら早く終わって、遊びに行ける
 でしょ? 決まりね〜v」
…とんでもない事を言い出した。

結局なし崩し的に女の子達に手伝ってもらわされることになった…のだが、
「なにー、これぇ? やだーさわりたくなーい」だの
「キャー、手が汚れちゃったー」だの
「みてーみてー、劇的にきたな〜い(キャハハハハハハ)」等など…。
手伝うと言うより邪魔にしかならなかったりする。
そんな中、キャーキャー言うだけの3人から離れたところで、ひとりもくもくと
掃除を手伝う女の子がいた。
「いやー、助かんぜ。ホント」
桑原がそう声を掛けるのにも、「いえ、言い出したのはこちらですし」と、
ニコリともせず答えると、またもくもくと掃除を始める。
(なんだかな〜)思わず頭を掻いてみたりする桑原だった。

「ちょっと遅くなりましたけど、お昼にしましょうか」
そう言いながら蔵馬がそうめんをテーブルに乗せる。
ちなみに4人+4人で、8人分。
「え、わたし達もいただいていいんですか? すみません」
感謝の意を表わしたのは、一生懸命手伝ってくれた女の子ただひとり。
「あ、あたしお昼もう食べちゃったしぃ、折角だけどいらなぁい」
「あたしも。それにそうめんて好きじゃないしぃ」
「うん、1つのお皿の物を取り合うのって、なんかヤだよねー」
…えぇい、勝手な事ばっかりぬかしやがって、この小娘どもがー!!
と、蔵馬が思ったかどうかはともかく…
「秀一さんて言うんですかー。すっごいぴったりー」
「うんうん、名前もかっこいいよねー」
3人の小娘に囲まれて、そうめんを口に運ぶヒマもないほど話かけられる蔵馬。
その蔵馬にそっと同情の視線を向ける、桑原と幽助。
そして丸っきり無視でそうめんに集中する飛影。
別荘の大掃除は無事終わるのだろうか!!!


3話