ある夏の出来事 3


昼食をすませ、再び掃除を再開する。
相変わらずきゃわきゃわ騒ぐだけの3人娘は蔵馬にあずけ、残り4人で片付ける。
「そういやよー、おめーの名前きいてなかったな。なんて言うんだ?」
ふいに幽助に声を掛けられ、女の子はビクッとし、
「あ、あの、です」
俯いたままそう答える。
「浦飯ぃ〜、てめーがいきなり声かけっから、びっくりしてっじゃねぇかよ」
「あ、いえ、そう言う訳じゃないんです」
「ちげーって言ってんぜ。桑原」
「んなん、遠慮してるに決まって…」
「あ、あの、本当に…」
「やかましい!喋るヒマがあったらさっさと掃除しろ!」
3人が言い合う中、不機嫌な飛影の声が掛かる。
「へーへー、わかりました。(ったく、帰るって言ってたのは誰だよ)」
ぼそぼそと言う幽助の声を聞きつけた飛影は、何も言わず横目で睨むと、
力一杯幽助の頬をひっぱった。

いつのまにか薄暗くなり、女の子4人は帰る事になる。
「じゃぁね〜。また明日きま〜すぅ」
そう挨拶して宿泊しているホテルへ帰ってゆく姿をみて、
蔵馬がオナカの底から溜息をつく。
「いや〜、モテる男はツライねぇ」そんな姿を見てからかう幽助。
「冗談じゃないですよ。また明日も来るのかと思うだけで胃が痛いんですから」
たった1日でやつれたような顔をして、蔵馬が呟くように反論する。
「それにしても蔵馬にも苦手なものがあったなんて、ケッサ…
いや、い、意外だなぁ」
やつれた顔でにらむ蔵馬の顔は、いつもより2割増しこわかったり…。
あらぬ方を見て言いなおす桑原であった。

とにかく簡単な食事をすませ(今夜の当番は幽助)、そろそろ休む準備をする。
もちろん飛影は夕べと同じように、別荘の前にある大きな木へと場所を移した。


「あの…おはようございます」
4人がそれぞれ朝食を終え掃除の続きをはじめた頃、遠慮がちな声がかかった。
「おっす、。…あれ、今日はひとり?」
幽助の言うとおり、今日は騒がしい3人は来ていなかった。
「あ、あの、疲れたからお昼頃来るって言ってました」
俯いたまま呟くように言う
「疲れただぁ?なんもしてねーくせによくゆーぜ」
「でもまぁ、助かりましたよ。今の内に片付けを進めてしまいましょう」
蔵馬に言われるまでもなく、片付けは着々と進んで行った。

「ところで浦飯よぉ、このカーテンとかソファはどうすんだ?」
桑原が古びてボロボロのカーテンとか、破れて穴のあいたソファを指差す。
「あぁ、一応新しいものに買いかえるための金はもらってあるから、
そっから出して買ってくりゃいいんじゃねぇ?」
「あ、それならおれが行ってきますよ。
幽助達じゃなに買ってくるか分かったもんじゃありませんし。
その間、掃除の続きの方よろしくお願いしますね」
そう言うと蔵馬はあたふたと買い物に出かけてしまった。
「なんでぃ、ありゃ」
「ま、そろそろお昼だかんな」
「あ、なるほどな」
「「・・・・・・・・・・」」
「そんじゃ飛影、おりゃ飯食いに行ってくらぁ」
「おお、じゃ一緒に行くか浦飯。あとは頼んだぜ飛影」
はははははは…と、わざとらしい笑い声が遠ざかる中、一人飛影がボーゼンと、
意味も分からないまま取り残されていた。
そしてもうひとりはただ黙々と掃除をこなしていた。




4話