ある夏の出来事 4 2人で声も掛けず、ただ黙々と片付ける。 もくもくもくもく… 「おい…」 先に声をかけたのは飛影だった。 「あ、はっ、はいっ」 「…なにをびくびくしている。オレは別にキサマを取って食ったりはせんぞ」 怯えられてちょっと不機嫌な飛影。 「す、すいません」 あいかわらずうつむいたままの。 「話してる時くらい、こっちを向いたらどうだ?」 誰かが聞いてたら(おめーに人の事が言えんのかよ)と突っ込まれそうだが、 幸い今は2人きりである。 「ご、ごめんなさい」 「あやまれとは言ってない」 「す、すみません。実はわたし、人と話すの苦手で…」 「? なんだそれは」 「あ、つまり、人と話す時意識しないようにと思っても、 つい不必要に緊張してしまって顔が強張ったりするんです。 だから本当に人と話すのって苦手なんです。すみません」 そう言ってますますうつむく。 だが… 「オレにはキサマの顔が強張ってるようにはに見えんぞ?」 「え?」 「だからキサマの顔は別に変じゃないと言っている。 顔が強張ると言うのは、気のせいではないのか?」 「え、でも…」 「とにかく、今キサマはオレと普通に話せているだろうが。何度も言わせるな」 それだけ言うと、飛影は部屋を出て行ってしまった。 しかし、の方は飛影の思わぬ言葉に、それに気付いてもいなかった。 しばし後、外からを呼ぶ声が聞こえてきた。 何事かと行ってみると…。 どこから調達して来たのか、飛影がブロックを積み上げた 上に鉄板を乗せ、昼食の準備をしていた。 「こ、これは…」 「昼飯の準備だ。それともキサマ食わんのか?」 そう言って、もんじゃ焼きを作り始める。 「あ、もんじゃ焼きですか? わたし好きなんです」 その言葉に、「ふふん、キサマも多少は舌が肥えているらしいな」と 上機嫌な飛影。 「っだいま〜」 「わりーな飛影、遅くなっちまったぜ」 2人が昼食を終えて1時間程あと、桑原と幽助が帰ってきた。 「あ、お帰りなさい」 飛影の言葉で今までの思いこみから解放されたらしいが、 にっこりと2人を向かえる。 「キ…」サマら何時間飯を食っているっ …と言おうとした飛影を物陰へ連れ込み、どアップで迫る2人。 ちょっと恐いかもしれない…。 「なにをするっ」 飛影の抗議にも耳を貸さず、ふたりは一斉に 「「あの彼女の変わりようはなんだよっっっ。ナニがあったんだ!?」」 そう問いただす。 まぁ、仕方がないと言えば言えるかもしれない。 「なっなにって…飯を食っただけだぞ?」 ふたりの勢いに気おされた飛影が、呟くように言う。 「嘘つくんじゃねー! 飯食っただけであんなに変わっかよ」 「桑原の言うとおりだ。さっさと白状した方が身のためだぜ」 なおも言い募るふたりの言葉に、ついに飛影がキレた。 「キサマら、黙って聞いていればいい気になりやがって! 誰が嘘つきだと?! くらえ!邪王炎殺もががっ…」 右手の黒龍に気を集めはじめた飛影を、慌ててふたりかがりで押さえつける。 「ばっ、バカ!こんなとこで黒龍なんぞぶっ放したら、 別荘ごと吹っ飛んじまうだろうが!!」 「もががもががっ!(誰がバカだっ!)」 「そこ、3人固まって何やってるんですか?(怒) その時、冷たい声が降り注ぐ。 呼ばれた3人が顔を上げると、そこには3人娘にまとわりつかれ、 あからさまに不機嫌そうな蔵馬がいた。 5話 |