運動会大作戦 3話 (作・安奈さん) とりあえず飛影は痛む頭を抱え、会場となっている小学校へ向かい始めた。 しかし、なれない二日酔いで頭はくらくらするし、ガンガン痛むし 胃はムカムカするし、足元は覚束ないしで、まっすぐ学校へ行ける自信はなかった。 もちろん、桑原にひろってもらった幽助の方も、同じような状態である。 (っかしいな〜。今まで二日酔いなんて縁がなかったのによぉ) 校庭の遊具によりかかったまま、蔵馬に呼び出されてからの事をつらつらと考えてみる。 その幽助の隣では、が螢子達に家に戻る事を告げていた。 「え、帰っちゃうのかい?」 「うん、二日酔いの飛影一人でおいとく訳にいかないし」 「そうだけど…折角飛影くんの方から、出ようって言ってくれたって喜んでたのに」 「うん。…でも、仕方ないしね」 (ちょっと、どーすんだい?ちゃんかわいそうじゃないのさ) 淋しそうに笑うを見て、ぼたんがこっそり蔵馬をつつく。 (大丈夫ですよ。飛影なら必ず来ますから) 「そう言えば飛影くんと幽助にお酒呑ませたのって蔵馬君よね」 こそこそ言い合う蔵馬に、いきなり核心を突く螢子。 「え、ええ。めずらしいお酒が手に入ったので、ぜひ幽助と飛影にも味を見てもらおうと思って…。 まさかこんなに酔うとは思いませんでしたから」 「しかしよぉ、あの浦飯がこんなに酔っちまうなんて… ひょっとして魔界の酒だったんじゃねぇのか?」 「そうなんですか?」 桑原の言葉に、普段は温厚なの目が据わる。 「え、ええ…まあ」 「と言う事は、もしかして最初から企んでたって事もありうるわよね」 そう言って螢子がとうなづきあう。 (こりゃちょっとヤバそうだねぇ) それを見てこっそりと蔵馬のそばから離れるぼたん。 「ま、まさかそんな…」 らしくもなくアセる蔵馬。 「フッ、言いたい事はそれだけか」 「え、さん?!」 の様子が変わった事に気付いた蔵馬が言いかけるより早く、 「くらえ!炎殺黒龍波ーーーっ!!!」 「こっちもおみまいしてやンぜ。くらいやがれ、れいがーーーんっ!!!」 「・・・さんと螢子さんて、怒らせると怖いんですね」 ぶすぶすと煙を上げる蔵馬を見て、雪菜がポツリとつぶやいた。 (どこだここは?) その頃飛影は、まっすぐ小学校に向かっていた。…筈が、いつのまにか道に迷っていた。 とりあえず襲いくる吐き気をなんとか堪えつつ、木の上で一休みする。 (チッ、クソっ。早くしないと運動会とやらが終わってしまう) そうは思うのだが、身体が思うように動かない。 2度と酒など呑むものか! そう心に誓う飛影だった。 「じゃぁ、一度家に戻って飛影の様子を見て、来れるようだったらまた来るわね」 それだけを言い残こし戻って行くを見送っている螢子に、幽助の苦しげな声が聞こえた。 「幽助、気がついたの?まったくだらしないわね」 「け……、……ず…」 振り向いた螢子に、幽助が掠れた声で何事かつぶやく。 「なによ、みみずが欲しいの?」 「けいこ、み、みず…」幽助はそうつぶやいたのだった。 (まぁ、なんてお約束♪) 一方、大急ぎで家に帰ったが飛影の名を呼ぶが、応えがない。 「もしかして学校の方へ行ったのかしらん」 そう思ったが再び来た道を戻る。 飛影の方も、多少は気分がよくなってきた…ような気がする為、小学校へまた向かい始めていた。 ふたりが小学校へ着いたのは、ちょうど得点競技の1つ、障害物競争が次に迫った時だった。 「!」 「あ、飛影♪」 ほぼ同時に互いに気付く。 「飛影、大丈夫なの? 無理して出なくてもいいんだよ?」 心配そうに問いかけるに、二日酔い特有の気持ち悪さをぐっと押し込め、 「フン。あの程度の二日酔いなど、どうと言う事はない」 と、強がってみせる。 しかし、やせ我慢が飛影の特技だと知っているは その言葉にも不安そうな表情を隠せない。 そんなを見て飛影はフッと笑うと、 「大丈夫だ。必ず1位を取ってみせる。だから心配するな」 そう言ってを抱きしめた。 その時… 「ヒューヒューv 熱いねぇおふたりさん。でもそんな事やってる暇はないんだよ」 声の主は 「ぼ、ぼたんさん」 が真っ赤になって飛影から離れる。 忘れていたがここは人ごみの真ん中で、今やふたりを中心に野次馬の輪が出来てたりもする。 慌ててこっちこっちと手招きするぼたんに着いて行くふたりだった。 「よぉ飛影…」 ぼたんに連れられて着いたのは、次の競技の出場者が集まっている場所だった。 「おめーはもう平気なのかよ?」 声を掛けて来た幽助は、まだ辛そうに頭を押さえている。 「フン、ヤワなキサマとは違うからな」 そう答えた飛影に、別の場所からも声が掛かる。 「なんだよ飛影、おめーも来たのかよ」 残念そうな桑原の声。 「でもまぁ、二日酔いでひぃひぃ言ってるてめーらが相手なら、まだ勝機もあるってもんだよな」 いまいち情けないが、ふたりと違ってまとも(?)な人間なだけに、仕方がないかもしれない。 さて、そろそろ障害物競走の開始が間近になり、選手がスタートラインに並ぶ。 しかしその時、一転にわかに掻き曇り、土砂降りの雨が降りはじめた。 最終話へ 『cross point』の部屋 |