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幼なじみ


「もう!幽助ったらー!」

「蛍子、俺が悪かった。謝るよ!」

    バッシーン!!!

幽助の顔に、蛍子のお得意のビンタがとんだ。

いつもの痴話げんか、蔵馬は微笑みながらその様子を見て呟いた。

「昔、オレ達もあんな風だったな・・・」





オレがまだ魔界にいた頃の話だ。

オレには同じ妖狐族の幼なじみがいた。名前は○○。

オレ達はいつも一緒に遊び、喧嘩もよくするけど、次の日にはケロッとしている、そんな幼馴染み。

子供の頃、妖狐の村が何者かに襲われ、多くの村人が死に、村は焼かれ、○○もオレも親を失った。

辛うじて生き残った者達は、慣れない荒れた土地での生活を余儀なくされた。

そのショックから立ち直れないでいるオレを、自分も親を亡くしたのにも係わらず

○○はいつも元気づけてくれた。それがかえって鬱陶しくて、よく反発もした。

悲惨な目にあっているのに、いつも明るく振る舞う○○を、「何て図太い神経なんだ。」と

軽蔑する時もあった。


ある夕暮れ時、○○が一人で土を掘り返しているのを見つけた。

「何をしてるの?」

後ろから声を掛けられ、驚いて振り向いた○○のそばに、焼けこげた種が落ちていた。

「この種は?」

「これは・・・お母さんが好きだった花の種。村の焼け跡から見つけて持ってきたんだけど、

 無理よね、こんなの植えても。芽なんか出るはずないのに。」

不意に○○の目から涙が溢れ出した。いつも明るい○○の涙にオレはとまどい、何も言えなかった。



  オレは自分の事しか考えてなかったけど、自分だけが悲しい目にあった訳じゃないんだ。

  平気そうにしてるけど、○○も辛いんだ。それを隠して、いつもあんなに明るく振る舞って。

  

当たり前の事にようやく気づき、オレは○○に言った。

「泣きたい時は泣けばいいんだよ。」

その言葉に安堵したように、○○は泣き続けた。今まで我慢してた分も全て。


「あーすっきりした!」

突然、○○は泣くのをやめて、いつもの明るい表情に戻った。

「ごめんね。泣いちゃって。でも、もう大丈夫!」

「何故今まで、我慢してたの?」

「お母さんがいつも言ってたの。『○○ちゃんは笑ってるのが一番可愛いよ』って。だから、お母さんが

 褒めてくれた笑顔で過ごそうと思って。それに、私も落ち込んでたら、蔵馬も益々落ち込んじゃうでしょ?」


それを聞いて、自分の事がとても恥ずかしくなったし、もう立ち直らなきゃだめだとも思った。

○○がオレにしてくれたように、オレが彼女にしてあげられる事は何かを考えた。考えて考えた結果、

オレはある結論に達した。そしてオレはある事のために、しばらく村を離れた。




2年後、村に戻ってきたオレは、○○をある場所に呼び出した。

そこは一面の花畑で、しかも○○の母が好きだった花で埋め尽くされていたのだ。

「蔵馬、これは・・・?」

「君のお母さんの花の種だよ。」

「でも、あの種は焼けてしまってて、芽さえ出ないはずよ。」

「オレはあれから村を出て、ある妖術者に、植物を操る妖術を学んだ。」

「植物を操る妖術はとても難しいって聞いたわ。なのに、たった2年でこんなにも・・・」

「早く、○○の喜ぶ顔が見たくてね。これでも、かなり頑張ったんだ。」

「蔵馬・・・ありがと・・・本当に嬉しい!!」

○○の目にうっすら涙が光った。

「お礼を言うのはオレの方だよ。今まで本当にありがとう、○○。」



それから、オレ達は元の二人に戻った。そう、あの日までは・・・





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