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『いつか、此の海で』 ~第4話~




とあるマンションの一室。

「飛影、また彼女の事を考えているんですか?」

「誰がそんな事を」

口では否定したが、蔵馬の言葉は図星だった。

「あの時トラックを運転していたのは状況から考えると妖怪でしょう。狙いはおそらくオレか飛影。
彼女を巻き添えにしないように、彼女から離れたのは仕方が無い事なんじゃないかな?」

「そんな事はわかってる!!」


あの時、魔界で飛影は記憶を失ってしまった。それと同時に妖力も極端に弱くなってしまった。

そんな状態の飛影を魔界に置いておくのは危険だと思い、蔵馬は人間界に連れて来た。

静養するための住まいを探している時、たまたまあの海辺の町を通りがかった。

記憶を失ってから何にも興味を示さなかった飛影だったが、海岸で夕日を眺めている一人の

女性から目を離さなかった。


  ・・・もしかして飛影の一目惚れ・・・?


まさかとは思いつつも、蔵馬は記憶を取り戻す為の何かの刺激になるかもしれないと思い、

眺めの良い、坂の上の別荘を借りた。

そして暴走トラックがきっかけで、飛影は記憶を取り戻した。

あれから数ヶ月・・・・・




本当は魔界へ戻りたかったが、記憶が戻っても妖力が戻ってこない。このまま魔界へ戻れば

危険なのはよくわかっていた。蔵馬が仕事へ行っている間、暇つぶしに飛影は食事の準備位は

するようになった。といっても、コンビニに弁当を買いに行く程度であったが。

コンビニからの帰り道、飛影は前を歩いている女に目がいった。



  ・・・似ている・・・


しかし、アイツがこんな所にいるはずがない。


  ・・・何を考えているんだ・・・


苦笑いしていると、その女が体勢を崩し反射的に飛影はそれを受け止め、お互いの顔を見た。


○○!!

「飛影・・・」


彼女はそう呟くと、そのまま意識を失ってしまった。

「ただいま。」

蔵馬は玄関の女物の靴を怪訝に思った。部屋のリビングには○○が寝かされていた。

「一体、どうしたんですか?!」

飛影から簡単な説明を聞きながら○○の様子を見た蔵馬は、軽い過労だと判断した。

○○が倒れる時、鞄からこんな物が落ちてきたんだが。」

飛影が差し出したのは、邪悪な妖気で覆われた一冊の古文書だった。蔵馬はそれを受け取り

中を見たが、本の中は何も書かれてはいなかった。


暫くして、○○が目をさました。彼女の研究所がこの町に移転した事を聞き、偶然の再開に

驚き喜んだ後、蔵馬は改まって尋ねた。


「君のバッグからこの本が落ちてきて、悪いと思ったんですが中を見ました。何も書かれて
ないようですが、この本は一体・・・?」

「・・・それは・・・」

「何か特別な事情でも?」

「・・・言っても信じてもらえないと思うから・・・」

○○が言う事なら信じる。話してくれ。」

飛影が静かに、しかし力強い口調で言った。




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