「妖魔の印」の章

氷泪石の秘密 第2話


真於の案内で妖黒山に着いた飛影は、額の布を取り邪眼を使ってみたが

真於の言った通り邪眼は殆ど効かず、何も見つけられなかった。仕方な

く勘を頼りに捜索を開始したが、真於を連れている分身軽には動けなか

った。

「チッ!こんな事で手間取るとは」

イライラしてみたものの、必死でついて来ようとしている真於を見て、

何も言えなかった。

「ここから先は沼があるようだ。落ちないように注意しろよ・・」

と言い終わらぬ間に真於は沼に足を滑らせてしまった。

「!!!!!!!!???」

沼の水はねっとりした緑色の粘液質で、真於はなかなか抜け出せなかった。

「ヤレヤレ・・・・・」

呆れながら飛影は沼に飛び込み、真於を助けあげた。


「飛影さん、ごめんなさい・・・。僕・・・足手まといになってる・・・」

べそをかいている真於に、飛影は言った。

「貴様は瑠紅を助けたいんだろ?なら泣いてる暇などない。行くぞ。」

ぶっきらぼうだが、優しさがこもっていた。


沼から出てきた二人は全身ベタベタで異臭がしていたので、途中の川で

体を洗う事にした。手早く服を脱ぎ、川に入ろうとした飛影の胸元を、

真於が驚いた顔で見つめていた。

「飛影さん、これは・・・?」

真於の視線は飛影の2つの氷泪石に釘付けだった。

「貴様には関係ないことだ。」

と言いかけた時、真於は自分の首にかけている石を見せた。

「同じ石だね。」

飛影は言葉が出なかった。真於の首にかかっているのは、まさしく氷泪

石。しかも、氷女が子を産む時に結晶する、特別な氷泪石であった。


(こいつも、氷河の国に捨てられたのか・・・)


真於はこの石がどういう物かは知らなかった。赤ん坊の時から首にかけて

いたという事くらいしか。


「その石は氷女が子供を産む時に、1つだけ結晶するものだ。」

「じゃぁ、やっぱりこの石は母さんが僕にくれたものなんだ!この石を見

 てると、とっても暖かいものを感じるんだ。きっと僕を守るために持た

 せてくれたんだとずっと思ってた・・・ あれ?じゃぁ、僕と飛影さん

 は同じ種族なの? 嬉しいなぁ〜。」


無邪気に喜ぶ真於に飛影はそれ以上の事は言わなかった。氷女から産まれ

てきた男児は”忌子”と言われ、産まれてすぐに故郷から捨てられる事。

そして、母親は出産後すぐに命を失うという事。そんな残酷な事は・・・。






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