「妖魔の印」の章

氷泪石の秘密 第3話


数日間、迷路のような妖黒山をさまよい、やっと瑠紅を見つけた。

邪眼が効かないこの山に土地勘がある真於を連れて来なければ、

もっと時間がかかったかも知れないと飛影は思った。

瑠紅はかなりの傷を負っていたが、飛影に経緯を何とか話始めた。



『妖魔の印』を狙った男の名は、久遠(クオン)。昔、瑠紅達孤児

を育ててくれた長老の元にいた孤児の一人であった。心優しく、幼

い瑠紅は本当の兄のように慕っていたのだが、ある日、突然村から

出て行き消息がつかめないままであった。。


「久遠兄さんは、『妖魔の印』を使い氷河の国を滅ぼしてやると言

 っていたわ!!」

「氷河の国を?何故だ!!」

思わぬ所で故郷の名を聞き、飛影は動揺を隠せなかった。

「理由は・・・わからない・・・。でも、兄さんは本気だった。だ

 けど、何か理由があるはず。じゃないと、争い事を避けている氷

 河の国を滅ぼすなんて、あの優しい久遠兄さんが考えるはずない。

 お願い飛影、久遠兄さんを止めて!!!」

「わかった・・・俺にまかせろ。オイ、真於!瑠紅の手当をしてやれ。」




オロオロしながら薬草を塗ろうとした時、瑠紅は真於の首にかかった氷泪石

に気づいた。

「これ・・・この石・・・子供の頃だったからすっかり忘れていたけど、

 久遠兄さんもこれと同じ石を持っていたわ。」



飛影と真於は目を合わせた。何か言おうとした真於に、飛影は(何も言う

な)と目で合図を送った。傷の手当てが終わると、瑠紅を安全な場所に移

した。

怪我をしている彼女を一人残して行くのは気がかりであったが、生まれ故

郷である氷河の国がした事、そしてこれから起ころうとしている事など全

てを真於に認識させ、自分自身で判断させるのがいいだろうと思い、飛影

は真於を連れて氷河の国へと向かった。







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