「妖魔の印」の章

氷泪石の秘密 第4話


氷河の国・・・・

氷女が外界との接触を避けるため、厚い雲に覆われた流浪の城で

漂流をしている国・・・そして、俺の産まれ故郷・・・

ここに来ると、懐かしさと悲しみの入り交じった感覚が渦巻く。

ここに母が眠っている。この少年、真於の母親もまた・・・・



「飛影さん、あれは・・・?」

瑠紅が言っていた久遠という男は、すぐに見つかった。

「貴様は久遠か?」

「ああ、そうだ。瑠紅に聞いて追ってきたようだな、飛影さんよ。」

「何故、俺の名を知っている。」

「あんたは有名人だからよ。俺達”忌み子”の間じゃな。」

と言って、チラリと自分の氷泪石を見せた。

「貴様は氷河の国をどうするつもりだ。」



久遠は飛影の問いには答えず、話し始めた。

「飛影さんよぉ、あんた知ってるか?氷河の国の女が勝手に産んで、

 勝手に捨てた忌み子の数を?俺が知っているだけでも、かなりの数だ。

 この国はその命を簡単に捨てやがった。死んだ者、生き延びた者、皆

 この国に恨みを持っているはずだ。違うか?」



飛影は何も言わなかったが、久遠は続けて言った。



「この氷泪石は、氷河の国の女達が俺達にしたむごたらしい事、そして

 その為に味わった死の恐怖、そんな諸々の事を吸い取り、血塗られた

 石だ。俺はその事を知ってから、この氷涙石に罪深い氷河の女達を滅

 ぼす事を誓って、今まで生きてきた。妖魔の印を手に入れた今こそが

 そのチャンスだ。あんたなら、わかるだろ?」



飛影が口を開こうとした時、真於が静かに言った。



「違うよ。違うんだ。この氷泪石は、血塗られてなんかいないよ。」



久遠は真於の首の氷泪石に気づいた。



「坊主、お前も氷河の国の女に捨てられた”忌み子”ってわけか。」



「僕は産まれた時、どんな風だったのかは知らない。あなたの言ってる

 事も、今初めて聞いた。でも、この石は僕をいつも元気づけてくれて

 いつも僕を暖かく見守ってくれていたんだ。絶対に血塗られたりなん

 てしてないよ。飛影さんもそう思うでしょ?」



真於の言葉に、飛影は何も答えられなかった。

確かに氷泪石を見ると心が和んだ。しかし、以前は久遠と同じように、

氷河の国を滅ぼす目的の為に生きていたのも事実だった。だから、真於

ほど純粋な思いは抱けなかった。





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